読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

「聖地および文化的景観としての先住民族の祖先埋葬地の保全に関する宣言」(w/ P.S.)

先住民族遺産 北米先住民族 文化搾取・濫用 土地権

 1つ前の投稿は引っ込めてしまったけれど、本当のところは、新薬開発の問題は、先住民族の文化や権利に関して「まったくの番外編」ではなく、医薬品業界や研究者(と場合によっては国家)によるバイオプロスペクティングの問題と深く密接な関係がある。これは、またいつか(このブログが続いていれば)取り上げる機会があるだろう。

 ところで、「何ひとつ変わりそうにない日本考古学協会の態度」には考古学関係者か考古学の愛好者だろうか、Yahoo!検索を通じてコンスタントにアクセスが続いている。忌々しいタイトルだから早く変わって見せてやれと考古学協会の中で議論が出ているとすれば嬉しいかぎりであるが、このブログにそのような力があるとも思えない。
 世界考古学会議での加藤理事長の「演説」は未入手であるが、北海道アイヌ協会が「演説」全文をホームページには掲載せずに『先駆者の集い』に載せるということはありそうである。16日現在、「理事長の動向」は、5月の総会以降更新されていない! ここのP.S. #5で書いたように、加藤理事長が「発掘された時の姿に戻す」の意味をバラバラの遺骨を1体にするというのであれば、「慰霊施設」の性格はこれまでのものと何も変わらない。しかし、もし加藤理事長が再埋葬を考えているのなら、「慰霊施設」の性格は変わってくる。

 さて、2014年11月7-9日にカナダ、ブリティッシュ コロンビア州バンクーバーのマスクィァム ネーション(Musqueam Nation)で「文化遺産プロジェクトにおける知的財産問題」という団体によって開催された国際的な集会の一部として企画された先住民族の祖先埋葬地に関する分科会に参加した考古学者、法律家、人類学者、エスノバイオロジスト、倫理学者、先住民族コミュニティのメンバー、学生、教育者、作家、人権専門家、文化遺産研究者によって発表された前文12段落、本文7項目と要請1項目から成る「聖地および文化的景観としての先住民族の祖先埋葬地の保全に関する宣言」というものがある。

 前文には、①先住民族の祖先の埋葬地保全について共通の懸念を共有すること、②カナダ、ブリティッシュ コロンビア州の先住民族の祖先の埋葬地の運命に対する特別の懸念の理由があること、③祖先の埋葬地は、独特の文化的景観として先住民族の伝統と精神的信仰に不可欠な歴史的および宗教的重要性をもつ場として先住民族コミュニティの有形無形双方の文化遺産であること、④墓地は人間の歴史の独特の貯蔵庫であり、遺骸の休息の場所であり、人間生活の継続の証しであって、埋葬地が証拠を提供する文化遺産は、未来の世代のための歴史記録を確保するために維持されなければならず、その結果、使われていない墓地の移動の禁止が生起しつつある規範であること、⑤文化遺産の保護がコミュニティとそのアイデンティティにとって決定的な価値をもち、従って、その破壊は人間の尊厳、人権および人間の幸福状態に対して不利な結果をもたらしかねないこと、⑥国家は文化遺産に対する先住民族の権利、および自らの祖先の土地との精神的な関係を維持して強化する先住民族の権利を尊重しなければならないという人権原則を支持すること、等々が明記されている。

 そして、宣言本文には、次のような項目が入っている。
①祖先の埋葬地は、歴史的・宗教的価値のある場所として先住民族コミュニティの有形無形双方の文化遺産であり、独特の文化的景観として先住民族コミュニティの伝統と精神的信仰にとって不可欠である。
②ブリティッシュ コロンビア州遺産法が、当該先住民族の口承史と文化的価値観に一致しなかったり、それらを考慮に入れない証拠形式と科学的範疇に基づいてのみ考古学者によって認められる祖先の埋葬慣習の物理的証拠を要求するという点で、同法はカナダ憲法国際法において承認されている先住民族の権利および文化的権利の両方の基本的原則を侵害している。
③文化の専門家によって提供される先住民族の口承史は、埋葬の慣習の科学的証拠とともに考慮されなければならない、祖先の埋葬地の信ぴょう性のある証拠の本質的な原典である。

 この宣言が興味深いのは、その内容だけでなく、2人の著名な日本人の学者がそれに賛同していることである。宣言は、2014年12月10日から2015年12月10日までの1年間、賛同者が募られたようで、賛同者名簿には北海道大学アイヌ・先住民研究センターの常本照樹教授と九州大学比較社会文化研究院の社会考古学教授であり世界考古学会議の会長を務めている溝口孝司教授の名が載っている。二人は、一応、組織代表としてではなく、個人賛同者の中に入っている。

 二人は宣言がカナダの国内向けであるから日本には関係ないという立場で署名しているのではないと考えたい。その内容は、当然、日本においても当てはめて考えられるはずである――日本に「先住民族コミュニティ」は存在していないと考えているのでなければ。

 アイヌ民族の祖先の埋葬地の保全と文化的景観としてのアイヌ民族文化遺産の権利を承認していくとすれば、当然のことながら、祖先の埋葬地の画定が必要となる。ここにもアイヌ総合政策室と「有識者」がアイヌ民族の代表の直接参加をもって進めるべき政策の課題があるはずである。


P.S.(09.22, 23:50):「聖地および文化的景観としての先住民族の祖先埋葬地の保全に関する宣言」の全訳と賛同者リストは、ここ(←クリック)から入手可能。

P.S. #2(09.23, 0:56):やってしまった! 別方法でお送りした方々へ。各文書のURLより下の英文は、削除してアップロードしたつもりでした。特に問題もないと思うので、そのままにしておき、再度お知らせすることも控えます。⇒URLの先にある公開文書は、24時間後に非公開にします。⇒24時間では短すぎたという方のために、元に戻しました。

P.S. #3(09.28, 1:30):非公開としました。