AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

FSCジャパンと北海道アイヌ協会の合意?

 「メディアが報じないこと」としてP.S.に入れようと考えていたのだが、新規投稿にしておく。

 アイヌ政策推進会議の第8回会合で、北海道アイヌ協会が次のような報告と「お願い」を出している。

ロンドン、リオデジャネイロ同様、東京オリンピックパラリンピック競技大会においても公共施設に国際森林認証材を使用するべく取り組んでいるところであり、同じく、民族共生象徴空間やイオル事業等の森林や水辺・川等の環境保全、更には先住民族の労働や文化遺構の位置付けが前提とされる国際森林認証制度の国内基準の整備が求められております。大きな二つの認証制度のうち、FSCジャパンとは既に話し合いがまとまっておりますが、SGECの認証は、道有林或いは国有林にも問題が生じる状態ですので、先住民族アイヌの政策検討にあたり、農林水産をはじめ厚生労働、法務他各省の積極的な参画を促していただくようお願いしたいと思います。
(「議事概要」2ページ。下線は追加。)

 その後の第26回「政策推進作業部会」で、それに答えるように事務局から次のように説明がなされている。

アイヌ文化復興に向けた全国的ネットワークの構築についても取り組むほか、既に問題提起されている個別事項の検討、つまり教科書の記述を含む幼児期を含む教育の充実、アイヌ女性の複合差別問題、生活の安定・向上、伝統的漁法等を円滑に実施する制度の運営、アイヌの伝統文化承継のための国有地等の利用、森林認証制度などについても対応していきたい。
(「議事概要」1ページ。下線は追加。)

 どなたか、特に地元紙やTVニュースに毎日接している方は、上の下線を施した部分についての報道を目にしたことがおありだろうか。話し合いや交渉事が内密に行われるのは仕方ないこともあろうが、合意に至ったのであれば、どうして公表されないのだろうか。アイヌ政策担当記者は、「議事概要」は読んでいないのかな。与えられたお墨付きの資料だけに基づいて記事を書くとか? 何がなんでも、そんなことはないよね。

 先住民族の権利やアイヌ政策と関連する森林や漁業との関係、森林認証などについては、このブログでも何回か投稿していた*1。例えば、2013年12月2日からの「『イランカラプテ』キャンペーン」の中や2013年12月12日の「社有林 vs. 『コミュニティ フォーレスト』」、そして、それらを再掲して加筆した2015年4月8日の「FSCとSFIの森林認証プログラム」である。また、今年1月31日には、強制移住と土地・資源(8)―第29条・第30条の中で、次のように記した。

 第29条は、現在、北海道アイヌ協会が森林を管理する製紙会社との間で従事しているらしい交渉とも関係していると思われる(cf. 「土地又は領域及び資源の生産能力の保全及び保護」)。「交渉」内容についてはまったく把握していないから言及は差し控えるが、本条項からも分かるように、この課題は単に私企業との交渉だけの問題ではないと考える。

 そういう意味で、冒頭の発言のように、北海道アイヌ協会が交渉に政府を引き込もうとしている意義は評価するが、「積極的な参画」によって何を達成しようとしているのかまったく不明である。

 FSCが聞き取り調査をした市民外交センターが北海道アイヌ協会へ振ったという話のようであるが*2北海道アイヌ協会による対応の概要は、同協会のホームページに次のように記載されている。

-7月、王子木材緑化(株)及び日本製紙(株)からの FSC における FSC 管理木材のリスク評価の実施申し入れに関係地区協会とともに対応した。

-8月、SGEC(緑の循環認証会議・日本独自)が相互承認の申請しているPEFC(森林認証プログラム・本部スイス・国際森林認証制度)の第三者委員会ヤロスラブ・ティムラック氏の諮問に加藤理事長が対応した。
・SGEC の独自の認証制度では国際森林認証とはなり得ないことから PEFC に相互承認を申請したが、PEFC 本部のコンサルタント機関から利害関係者であるアイヌ協会に対し直接諮問があったもの。

-9月、FSC国内森林管理認証規格策定プロセス第1次草案(第1部社会関係)作成ミーティングに阿部副理事長が参画した。
-11月、新秋木工業 ( 秋田県 )(株)及び日本製紙(株)からの FSC における FSC管理木材のリスク評価の実施申し入れに関係地区協会とともに対応した。

 もう一度書く。FSCジャパンとの話し合いが既にまとまったのであれば、なぜ公開されないのか、なぜそのようなことが報道されないのかという思いが強くある。

関連して、面白い週末の読み物を提供しておく。

北アメリカの私たちの何人もが、合衆国へのカナダの木材輸出品をめぐるカナダと米国の間の争議に関わることに一緒に取り組みました。カナダは、木材の主要生産国です。米国もそうです。米国政府は、カナダ政府がカナダの木材会社に補助金、すなわち支払いを提供しているから、カナダの木材が人為的に安価であると同意しました。
 カナダの先住諸民族が、その事件に介入して、カナダの木材が安い本当の理由は土地が盗まれたからであると主張しました。私自身を含めて、環境と人権の弁護士の集まりが、カナダは先住諸民族の土地と樹木をその同意なしに、そして先住諸民族にそれに対する支払いをせずに譲り渡していることで国際法に違反したとだけ言う、それらの議論を用意するのに関わっていました。二つの興味深い意外なことがありました。最初の意外なことは、米国政府が賛成したことでした。米国政府は、これがこの事件に勝つ助けとなる偉大な方法であると突然気づき、そしてひとたび米国政府が賛成すると、米国の先住諸民族がその事件に興味をもって、なぜ米国は自分たちの樹木を保護していないのかと問い始めました。そういうことで、それは、これが本物の争点であって、米国とカナダ両国が、ある程度まで、先住諸民族の土地を保護しないことから利益を上げているという意識を高めました。その特定の事件では責任があったのはカナダでしたが、誰もが木材以外の鉱物や資源に関して米国もまた責任がある複数の例を見つけることができます。二つ目の意外なことは、WTO、すなわちその事件を審理するために設立された争議解決委員団が、その議論を検討することに同意したことでした。それが政府によって行われなかったにも拘らず、非政府組織によって準備された適切な事実が検討されるということは、今やWTO の慣例のことです。そういうわけで、もし二つの国が銅輸出品について論争していて、両国のどちらかに位置している非政府組織が、その銅がどこに由来するのか、そして多分どの先住民族がその銅を得るために強制退去させられたのかについて非常に多くのことを知っていれば、そのことは、WTO の委員団、すなわち判事たちがどちらの国がその貿易争議に勝つべきかを解くのに助けとなるので、判事たちが検討するべき事実とみなされます。そういうわけで、そのことは、少なくとも、問題の真の性質をその貿易委員団に提起して、お金が実際にどこへ行っているのかについて貿易委員団と関係諸国の他の集団の意識を高めることができる手順の始まりです。人権と先住民族の権利問題を貿易問題の中へ持ち込んで、それを単なる人権の事件以上のもの、経済的事件へと転換すること、それが究極的には、根底で、これらの事件の本質なのです。
 これを行うことについて潜在的注意事項として考慮するべきことがいくつかあり、そのうちの一つは、例えば、すべての政府が、大なり小なり、先住民族の権利の侵害に責任があるということです。英語を話す弁護士であれば「汚れていない手」と称するであろう手をした政府は恐らくないでしょう。すべての政府が、ある程度まで、そのような争議に汚れた手でやって来ます。しかしながら、このことは各国政府を全面において判断することではありません。貿易委員団がこれらの事件の一つを検討する際、それは、特定の産業の文脈における特定の争議を検討しているのです。それで、ある政府は先住民族の木材を盗んでいるかもしれませんが、他方、別の政府は先住民族の鉱物を盗んでいて、そしてもう一つの別の政府は労働を盗んでいます。しかし、これらの争点の一つひとつが、特定の貿易争議における別々の争点として検討されることになります。それで、私たちがカナダの土地政策にこの軟木/木材の攻撃をもたらしたとき、焦点は木材でしたが、米国の先住諸民族にとっては、それは、水に関してとなるでしょう――そして、それは別の争議となるでしょう。その場合、米国は、米国の先住諸民族によって利用されている水に対して十分な保護を提供してこなかったために、無防備となるでしょう。すべての政府には何か隠すべきことがあり、すべての政府には行うべき何らかの改善があるため、これは進展型の問題です。しかし、もし特定の産物において、公正な貿易に関する特定の争議に焦点を当てる際に取り扱われれば、それは本当に、先住民族の問題がほとんどどの貿易争議においてもどこかの政府によって提起されることを可能にします。なぜなら、世界のどこかで、その国境内に住む先住諸民族からその産物を盗むことによって利益を得ている一部の政府が存在することになるからです。


(ラッスル L. バーシュ「貿易と知的財産権先住民族の知識、地域固有植物品種、その他の『生態学的および知的な資源』への影響」『ウレシパ・チャランケ』No. 50、16-17ページ.)

 東京五輪会場の建設資材の調達にも応用できそうである。

*1:「していた」というのは、あるきっかけでこの件に関して継続して情報収集・提供をする気が失せたからである。

*2:それを読んだブログは、現在非公開となっている。なお、「講演『2014先住民族に関する国連特別総会と国際人権基準の浸透―ヘイトスピーチから森林認証制度まで』」森林認証制度における先住民族の権利が日本語で解説されている。