AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

北海道アイヌ協会、加藤理事長の世界考古学会議での講演原稿(rev. w/ P.S.)

 1時間ほど前、本ブログの熱心な読者から、標記の講演の原稿が公開されているというメッセージが届いていた。

P.S.(12:31, 1:27):昨夜戴いたメッセージのURLからは、直接、講演原稿のページへ移動しました。そこが9月1日のページだったため、「新着情報」に9月の記載がないことが変だと思いました。それが勘違いの始まりだったようで、12月28日の「"理事長の動向"をアップしました New!!」をクリックすると、9月1日の投稿にリンクされているようです。政策推進作業部会で報告したことで公開することになったのか、作業部会の「議事概要」に全部載らなかったからなのか、とにかく、なぜ4カ月近くも経ってからの公開なのか分かりませんが、ここから下の内容は削除することにしました。私の確認不足で読者ならびに関係者にご迷惑をおかけしたかと思います。お詫び申し上げます。
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Source: here.

 なお、下の画像は、講演原稿を読んでの私の反応として残しておきます。今夜、文章で出す用意をしていましたが、やめておきます。
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Source: here.

P.S. #2(12.31):私が「報告書(案)」を根底からやり直すべきだと考える理由を年内にもう少し説明しておきたかったが、あれこれあって時間的に無理になってしまった。

 何はともあれ、政策推進作業部会に報告したからだろうか、加藤理事長の演説の公開に対する要望も聞いてもらえたが、演説の内容には矛盾が多い。でもそれは、上述の通り、今夜は書かないでおく。以下では、前から焦点となっていた部分だけを取り上げることにする。

 北海道アイヌ協会サイトに掲示されているのが「講演原稿」というのも、一つのミソである。国連経験も豊富な同協会のスピーチライターは、発表声明文書の隅には"Check against Delivery"と記されているのが一般的であることはご存知であろう。すなわち、原稿は実際の発表と照合せよという意味である。加藤理事長が現行通りに演説したかどうかは録音がないので不明であるが、ここでは同じであったという前提で書くことにする。
 焦点の部分は、このようになっている。

祖先の遺骨や副葬品が国の責任の下、関係機関が誠意を尽くし発掘時の姿にすることで、在るべき慰霊の姿となり、返還を含めた禍根の無い解決が、現実味を増すと考えます。(「演説原稿」、4ページ)

 これを報じた北海道新聞記事「遺骨返還に国際的後押しを」では、次のようになっている。

「国の責任の下で、発掘された時の姿に戻すことが、あるべき慰霊の姿だ。日本の取り組みに国際的な後押しをしてほしい」と訴えた。

記事タイトルが「遺骨返還」となっていることには疑問が残るが、恐らく後述のように、加藤氏が「返還を含めて」と言っていることから付けたのではないだろうか。また、新聞記事での引用符の使い方はそのようなものかとも思うが、前半はほぼ原稿通りではある。

 さらに、この演説内容を北海道アイヌ協会の誰か――佐藤事務局次長ではないかと推測する――が第28回「政策推進作業部会」で報告した際、この部分は重要ではないとでもいうかのように、すっぽりと抜け落ちている。道新が報じてもいるように、そしてその後の展開から見ても、これは加藤理事長の最も言いたかったことの一つではないかと思うのだが、「議事概要」(p. 4)にはない。そこだけ削除されたのであろうか。「1904年のセントルイスオリンピックに『人類学の日』と称した先住民族の付属イベントや競技に参加」したことに言及*1した後、報告者は、このように述べた。

そして最後に「「世界考古学会議全体会」として、今後の日本国内での先住民政策の取組について国際的な後押しと、継続的なモニタリングを続けて頂き、遺跡や遺構、先祖の営みから将来の先住民族の生き方や精神的、哲学的な価値観を見直し、再活性化するような支援機能を考えて頂ければ幸いと思います」としている。

 加藤理事長の「講演原稿」に戻ると、そこから加藤氏が「発掘時の姿」で考えていることは、やはりバラバラの遺骨を一体化することだと思われるが、「返還を含めた」という部分に微妙にそれ以上のことを考えているのではないかと読める気もするが、それは過度の期待であろうか。その曖昧性がゆえに、作業部会あるいは「議事概要」に出されなかったのではないか。いずれにせよ、この部分は、非常に曖昧である。

 そこで最後に、演説原稿のこの部分と英文原稿の同じ箇所とを比較してみる。

When the Japanese government ensures that all relevant organizations will make sincere efforts to return the skeletal remains*2 of Ainu ancestors and funerary objects to their condition prior to disinterment, we can pay our respects to our ancestors in an ideal way. We believe that it will become increasingly realistic to solve the issues, including the return of skeletal*3 remains, without sowing seeds of future problems.(p. 6)

英文では"their condition[s] prior to disinternment"となっているから、文字通りに逆翻訳すれば、「発掘の前の状態」となり、墓に入っていた状態となる!!

 また、焦点の箇所ではないが、もう一つ書いておくと、その直前の段落では、「さらに、学協会や国内、国際的な支援が相まってこそ、先住民族アイデンティティ形成と共生社会の基盤が定められると思っております」となっているのであるが、遅くなってしまったのでこの内容――「先住民族アイデンティティ形成」に関して――への批評はさて置くことにして、これが英文ではこのようになっている。

With the support of academic societies and the public at home and abroad, we can help the Ainu people develop their ethnic identity as an indigenous people and lay the foundations for a society of ethnic harmony. (p. 6)

 下線を引いた"we"と"their"とは誰のことであろうか? アイヌ自身あるいは加藤氏自身がこの部分を英訳すれば、こうはならないであろう。この翻訳者は、明らかに、アイヌ民族の立場からは翻訳していない。

P.S.:しかも、"ethnic harmony"って、意味をなすの?

*1:興味深いことに、この部分は、加藤氏の原稿よりも言葉多く述べられていて、補足されてもいる。

*2:翻訳者は、なぜ"skeletal"と限定するのだろうか。

*3:ここでも。

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