AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

アイヌ遺骨、ルーツ調査でDNA研究 協会と札幌医大が覚書

アイヌ遺骨、ルーツ調査でDNA研究 協会と札幌医大が覚書 「事前説明なし」と発掘地域アイヌは反発産経新聞 2017.2.26 19:55)


北海道内で遺跡調査などの際に発掘されたアイヌ民族の遺骨が、アイヌのルーツを調べるDNA研究に使われていたことが26日、関係者への取材で分かった。北海道アイヌ協会が、遺骨を保管する札幌医大(札幌市)と覚書を交わし、研究も了承。ただ発掘地域のアイヌは、覚書や研究について知らされていないと反発している。

 アイヌの遺骨を巡っては2012年以降、研究目的で保管していた北海道大に子孫らが返還を求めて提訴。昨年、札幌地裁で和解が成立し、遺骨を地元で再埋葬した。原告側は「アイヌにはコタン(集落)で死者を弔う習慣がある」と主張。アイヌ協会元幹部は今回の研究をコタンの子孫とみられる人に「一切周知していない」としており、遺骨の扱いが議論を呼びそうだ。

 札幌医大によると、千歳市浦河町平取町などで発掘された約250の遺骨を保管。10年から国立科学博物館の研究者と山梨大大学院の教授が古い身元不明の骨約100個でDNAサンプルを採取した。人類の移動を調べ、アイヌが北海道に先住していたことを証明する目的という。

P.S.:今回発覚したものとは別の札幌医科大学北海道アイヌ協会との「覚書」については、2014年秋に20ページ(原稿用紙にして80枚)まで書いてそのままにしておいた論稿がある。こんな感じである。

北海道アイヌ協会札幌医科大学の「アイヌ人骨」研究「覚書」
――「モデルケース」を検証する――


1.はじめに
2.札幌医科大学におけるアイヌ「人骨」の保管状況と一部の返還事例
3.北海道アイヌ協会札幌医科大学との「覚書」
4.「単一民族国家」の法としての埋蔵文化財保護法
5.パンドラの箱を開けた北大
6.死者の権利
7.政府(厚生労働省文部科学省)基準
8.UNESCO基準
9.NCAI基準
10.結論

 これにUNDRIP規準と、その後の研究に基づいて昨年夏に書きかけてそのままになっている「先住民族の人体組織研究ガイドライン」(現在9ページ、原稿用紙で約36枚)をくっつけると――単純に付け足すということは難しいが――、薄い本くらいにはなりそうだ。でも、気力はあっても、時間と体力が不足しているのである。

P.S. #2(03.01, 0:20):もうずい分前になるからはっきりと記憶していないが、ブログには出してなかったと思うので、上の3の節をここに抜き出しておくことにする。

3.北海道アイヌ協会札幌医科大学との「覚書」

 「札幌医科大学保管のアイヌ人骨の受入・管理・返還等についての覚書」(「覚書」)の前文には、「人体・人骨に係る研究」について、「当事者と遺族並びに関係者との合意に基づいて行われ、人間の尊厳に十分な配慮をもって行われるべきものである」とされ、同大学における「アイヌ人骨の受入れ・管理・返還等に関わるこれまでの合意や調査は不十分であったため、アイヌ人骨に関する一切の責任に伴う基本的事項について」、両者間で「覚書」が交わされたとの経緯が記されている。
 「覚書」の内容は、次の5項目から成っている。
1.札幌医科大学(以下、札医大)に保管されているアイヌ人骨については、すでに提出した資料の見直しと出自の調査を進め、すみやかに北海道ウタリ協会に報告するものとする。
2.札医大にあるアイヌ人骨の保管と供養ならびに研究のあり方については、故人の尊厳とアイヌ民族の誇りを常に意識し北海道ウタリ協会と札医大が協議のうえ、双方が合意できる形で進めていくものとする。
3.今後、札医大におけるアイヌ人骨の受入・管理・返還その他についての基本方針については、北海道ウタリ協会と札医大との間で協議をおこなうものとする。
4.札医大保管のアイヌ人骨を用いた研究成果は、積極的にアイヌ民族はもとより広く一般に公開し、また将来北海道の医療にたずさわる本学学生等にも北海道の先住民族であるアイヌ民族についての正しい理解に供するよう努めていくものとする。
5.上記事項ならびにその他の事案が生じた場合は、必要に応じ日本人類学会、関係教育委員会および他の関係者・関係機関とも協議をおこなうものとする。


 札医大におけるイチャルパについては、2004(平成16)年10月7日付けの加藤忠理事長から今井浩三学長宛ての「アイヌ民族の遺骨について(照会)」(北ウ第209号)という文書の中で、北海道大学に収集された遺骨に対して当時既に行われていた「慰霊」が参考として言及されており、これがその後の札医大でのイチャルパのモデルとされていると思われる。
 その後、なぜ北大と北海道ウタリ協会との間で、少なくとも札医大レベルでの取り決めやそれに類する合意文書などが交わされなかったのであろうか。2004年当時には北大がモデルとされていたにもかかわらず、今日のアイヌ政策推進会議では札医大がモデルとされるに至っている。さらには、文部科学省の2011年~2012年の調査で11大学が判明した時点で、北海道アイヌ協会は、なぜ札医大に行わせたのと同様の経緯等の報告を各大学に提出させなかったのであろうか。文部科学省から各大学に提出が求められた回答事項は、この文書を参考に作成されたのであろうか。
 以上のように、さまざまな疑問が尽きないが、「覚書」そのものの内容についても、いくつもの疑問が生じる。第一印象を一言で言えば、「人体・人骨に係る研究」の手順について具体的なことは何も明示されておらず、「モデル」となるには甚だレベルの低いものと言わざるを得ない。第1項で「北海道ウタリ協会に報告」された調査結果は、そこから先、どのように取り扱われるのであろうか。これは、協会と他地域のアイヌ協会(旧支部)や協会に所属していないアイヌ民族との問題である。第2項の「研究のあり方」で言及されている「故人の尊厳とアイヌ民族の誇り」の問題、それの「意識」するだけの問題、そして第3項にも出ている「北海道アイヌ協会と札医大」だけの間の「協議」という代表性の問題、「今後」の「基本方針」をどのように向上させていくのか、単なるマニュアルではなく、政府との協定にもっていく方針、第4項の研究成果の還元の方法とそれに伴うプライバシー確保の問題、「知識生産」に関わる非対称の力関係をどう是正し、それを「正しい理解」にどう含めるのか、等々。まとめて言えば、この「覚書」は、今日の「人体・人骨に係る研究」の倫理基準に適合しているであろうか。アイヌ民族は、この「覚書」で十分と認めるのであろうか。公益法人化した北海道アイヌ協会ならびに旧支部は、この「覚書」を「承継」するのか、それとも独自の「覚書」を要求しても良いのではないか。
 しかし、第18回「政策推進作業部会」で公表されたことは、札医大での取組を賞賛し、モデルとして持ち上げた上、遺骨の研究に関して北海道アイヌ協会の理事会が決定し、既に人類学的研究が実施されたことがあるということであった。
 また、北海道アイヌ協会は、札幌医科大学アイヌ遺骨に関しても、何も解明しないままに、なし崩し的に遺骨の研究許可を「覚書」によって与えたことが示唆されている。

(以下、略。)