AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

アイヌ遺骨の所有権 (w/ P.S. X 2)

 5月16日に北大開示文書研究会の共同代表をはじめとする7名の連名で「アイヌ人骨研究利用に関する札幌医科大学への質問書」が札幌医科大学の担当者に提出された後の記者会見で、次のようなことが述べられている。

医大からひとつ、口頭ですけれども言われたことは、(遺跡調査時に発掘され、そのほかの遺物とワンセットにされて)文化財としての遺骨というものがあって、それは(調査を実施した各自治体)教育委員会所有権があるのであって、「わたしたち(札幌医科大学)には所有権はありません」とおっしゃってましたね。その言葉に納得したわけではありませんけれども。従って、「教育委員会の了解を得て研究が行なわれたのである(から札幌医科大学の対応に問題はなかった)」というふうに医大のほうは話をしておりました。「北海道アイヌ協会の了解も得た」とも言っていました。

 私は、札幌医科大学文化財保護法の庇護の下に逃げ込んだなという印象を持ったのであるが、そもそも教育委員会に[遺骨に対する]所有権がある」のかということを問いたい。回答が出るのはまだ先のようでもあるし、北大開示文書研究会他の関係者からもっと情報が公開されるのを待ちながら、今週以降、もし時間と体力とやる気があれば、このことについて書くかもしれない。(2017/05/22:rev.)


P.S.:その前に、2つ前(後で1つ前になる)の「ご質問にお答えして」の最後で参照している文献について少し補足しておきたい。

 「久しぶりに流し台の下のタンクの中を覗き込んだらバカバカしくなって」と書いたのが11月26日の深夜(27日になっていた)だったから、その夜に気づいたことである。この記事のP.S. #4で書いたように、検索で挙がってきた写真を見ていたら、そこにどこかで見たことのある外国人の写真があった。それから辿ると、2013年11月15日~17日に開催された「北海道大学サステナビリティ・ウィーク2013 国際シンポジウム『先住民文化遺産とツーリズム-生きている遺産の継承と創造-』」の案内に行き着いた。そこに、ジョージ ニコラス氏とジョー ワトキンズ氏の名前がある。2人は、IPinCHというカナダの非営利法人の代表とメンバーである。IPinCHはThe Intellectual Property Issues in Cultural Heritageという団体の略称で、邦訳すると「文化遺産における知的財産問題」となる。この方たちを含む報告者の講演録(または報告)は、普段訪れない北大のアイヌ・先住民研究センターのサイトに不慣れなこともあるせいか、サイト内のどこにも見つけることができなかった。「研究成果」のページの冒頭には「『先住民族の権利に関する国際連合宣言』などの翻訳もおこなっています」とも書かれているのだが(2016年11月25日時点で。)北大の研究センター教員も入っていたラウンドテーブルの「報告書(案)」(この時点では、まだ「中間報告」)でも「社会への還元」が強調されているが、詰まるところ、それは政府から配分された多額の予算を使って海外から次々と研究者を呼び、交流会をもち、論文を書いてそれまでという感じを受けた。
 「A Double-edged Sword(諸刃の剣)」のシリーズは、2つ前の記事で参照したカナダのバンクーバーで2015年にIPinCHによって開催されたシンポジウム報告書を基に適宜、解説と補足を加えたりしながら書いていたのであるが、あまりに長くなりそうだったし、研究資源豊富な研究者たちはその報告書に気づいてオリジナルのシンポジウム報告書を読んだり、録画を観ていることだろうと思うと、途中で作業が虚しくなって中断してしまったというわけである。そのシリーズの中で言及した国際シンポジウムというのが、この2015年のシンポジウムであり、IPinCHによって開催されている数々のシンポジウムや講演会などの活動の1つであった。さらに、常本照樹氏も賛同者に署名していた「聖地および文化的景観としての先住民族の祖先埋葬地の保全に関する宣言」も、同団体主催のシンポジウムの中で採択されたものである。そういうわけで、常本氏がその文書に署名していた背景も推察できたというわけである。
 これはもう「「歴史の抹殺」!――やはり変わる気のない「人骨学者」」でつながりを書いたことではあるが、「A Double-edged Sword:遺伝人類学と先住民族の権利(3)」でフィリップ ウォーカー(Phillip Walker)が批判的に取り上げられているのを見て、同センターの若き考古学者はドキッとしたのではないかと思っていた。このシリーズの(3)以外にも、ウォーカーについては、2012年1月28日の「人体『標本』返還と脱植民地主義(先住民族の「遺骨」と原爆犠牲者の臓器)」でも言及している*1
 最後に、IPinCHのシンポジウムで興味深いのは、講演者がそれぞれ冒頭の挨拶で"unceded territory of ~"(~の割譲されていない領土)と述べて、開催の地の先住民族に敬意を表することである。私は、ここで「未割譲アイヌモシリ」と書いたことがあるが、北大に招かれた2人がその時にそういう挨拶をしたのか、常々、研究センターの方々がそういう意識を持たれているのかは、知る由もない。


P.S. #2(05.23):先に少し書いてくれた人がいます。

【札幌医大側の論理】

所有権は教育委員会にあり札幌医大教育委員会から委託を受け預かる、つまり民法の寄託契約(民665以下)に基づき保管しており、医大側は教委にのみ善管注意義務保管義務を負い第三者のアイヌ(遺族にも)責任はないというのだ。

*1:この記事は、いずれまた、「人骨学者」たちの主張を批判する際に再度参照することになるだろう。