AINU POLICY WATCH

――In Light of the U.N. Declaration on the Rights of Indigenous Peoples――

上の写真:ジュネーヴのサン-ピエール大聖堂からレマン湖を望む。

毛髪のmtDNAによる「歴史の解明」(w/ P.S. X 2)

 2つ前の記事の続きである。北海道アイヌ協会と日本人類学会会長(たち)は、なぜ「奪取」されたアイヌ遺骨のDNA研究にこだわるのか?

 もちろん、現時点で私は、正確な答えを知っているわけではない。少なくとも公けの席で、関係者は本心を語っているわけではなさそうである。平取での講座で講師のお二人に誰か聞き出して欲しかったし、もしかしたら誰かが質問したかもしれない。しかし、私は現場にいたわけではないので、今のところ分からない。

 答えはわからないが、遺骨を返したくない、一体でも多く「異例研究施設」に留めたいという、常本氏流に言えば、二者の「利益の一致」なのであろう(➡Cf. 「"Package Deal"(パッケージ ディール)」)。北海道アイヌ協会がただ、現在の北海道に住み着いた「ヒト集団」の歴史を「科学的」に知りたいというのであれば、奪取された自らの祖先の遺骨を破砕を伴う研究に提供せずとも、日々の科学の進歩の中で別の方法が出て来る可能性があるだろうとは考えないのであろうか。

 例えば、今年の3月9日に出版されたNature誌に、そのような可能性を窺わせる記事が掲載された。それを伝えたオーストラリアのABC Newsの"DNA confirms Aboriginal people have a long-lasting connection to country" (9 March 2017)を紹介する。篠田氏らの人骨研究者はもちろんご存知の研究であろうし、北海道アイヌ協会にも十分な情報が提供されていることであろう。

 新たな研究成果というのは、1928年から1970年代の間に行なわれた調査中にアボリジニの人々から取得された毛髪の標本から得られたミトコンドリアDNAの分析に基づくもので、現代のアボリジニニューギニアがまだ陸続きであった約5万年前に大陸に到達した1つの基礎集団の子孫であることを再確認したというものである。

 しかし、研究を率いたアラン クーパー教授(オーストラリア古代DNA研究センター)によれば、これら最初の人々はその後、西岸と東岸を急速に移動して、約2,000年後にオーストラリア南部で出会うことになった。

 この分析によれば、一部の集団は、その大陸内の移動の際に特定の地域に留まり、それ以来それらの地域に継続的に存在してきており、その地との5万年に及ぶつながりをもっているとのことである。

 この研究チームが分析したのは、クイーンズランド州のCherbourgと南オーストラリアのKoonibbaとPoint Pearceのコミュニティに強制移住させられていたアボリジニの家族から元々、許諾を得て収集されていた毛髪の標本の111本から得られたミトコンドリアDNAである。

 南オーストラリア博物館には、文化、言語、家系、地理に関わるデータが完全に揃った5,000以上の毛髪標本のコレクションがあるそうである。これらは、1928年から1970年代の間にアデレード大学の人類学調査委員会によって実施された遠征調査で取得されたものである。

 研究報告の共著者、レスリー ウィリアムズさんはCherbourg出身の先住民女性で、毛髪標本提供者の一人の孫にあたるそうで、また、研究プロジェクトの主要アドバイザーであったとのこと。彼女によれば、多くの非先住民がアボリジニの歴史的存在を否定してきた背景で、この研究結果が自分たちが主張してきたことが正しいということを証明しており、その意味で非常に貴重であるとのこと。
 さらに彼女が重要なこととして指摘しているのは、アボリジニが研究の正しい文化的・倫理的枠組みを開発する上で主要な役割を果たしたということ、そして、毛髪提供者またはその子孫の同意を得られた標本に限って分析が行われ、結果が公刊される前にそれらの家族と直に向き合って議論されたことである。

 記事のまだ半分くらいであるが、ひとまずここまでにする。札医大にあるアイヌ遺骨の篠田氏らによる研究方法とえらい違いであることは分かる。

P.S.:途中の青字部分が落ちていたので追加。
 まだ途中だけど、追記のついでに。➡Cf. イギリスのThe Guardian紙の記事:"Aboriginal DNA study reveals 50,000-year story of sacred ties to land".

P.S. #2(07.10):7月8日の北海道新聞による限りでは、新たな遺骨返還訴訟になりそうな背景として、北大が「大学単独の判断では返還できない。現状では司法機関などの公的な判断が必要」と言っているそうであるが、例の落語研究会の方の「自分たちで決める/決められないこと」とか何とかの演題を思い出してしまった。京大や東大をはじめとする他大学and/or文科省(and possibly北海道アイヌ協会「幹部」?)などからの圧力があるのだろうか。

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